p>今回もスタッフからの投稿です。

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体の衰え

フレイルとは体の衰えの事ですが、大きく2つに分けられます。筋肉、骨、関節などの衰えによるロコモティブシンドロームと 口腔機能の衰えによるオーラルフレイルです。

整理しますと次の通りです

・ロコモティブシンドローム 2007年 日本整形外科学会

筋肉、関節などの衰えで身体的機能が低下し動けなくなる

・オーラルフレイル  2015年 日本歯科医師会

口腔機能の衰えで栄養が不足し身体的機能が低下、認知症や動けなくなる これは肺炎が3大死因に入った事で摂食嚥下を含めた口腔機能が注目された結果

ロコモティブシンドロームに関しては殆どのリハビリテーション科で実施されていますが、オーラルフレイルに関しては実施施設を探すのが困難な状況です。

口腔機能の衰えの原因に、口が開かず噛めなくなる顎関節症があります。今後増加の傾向にありますが、医科と歯科の狭間にあっていまだに関心は低く、リハビリテーション科での実践例が少ないのが現状ですが、当院では既に実施しています。

健康維持の基本は ①呼吸 ②食事 ③運動です。

呼吸や食事に欠かせない、あごや頚椎の変形に伴う噛み合わせ不良、食道、気道の狭小、不良姿勢に関してのリハビリテーションは理学療法士でも関わりが少ない状況ですので、今後も臨床での研究を重ねていく必要があります。

あごの動きは首の骨と深い関係があります。噛み合わせ力は60㎏位ですが脳からの抑制が解放された睡眠時の歯ぎしり等では物理的に200㎏以上の力が発生します。もちろんそれに対応できる構造にはなっていますが、骨が変形しやすく、不定愁訴と呼ばれる痛み、しびれ、頭痛などを引き起こします。そのための理学療法は高度な手技と慎重さが必要ですが、しかしその場であごの痛みがとれ、口が開くようになった、肩のこりが緩和、首の動きが改善したなど、治療効果が出やすいのも特徴の一つです。また、臨床例から不定愁訴の頭痛や更には更年期症状などにも応用できる事がわかりました。

4月には診療報酬の改定も実施されますが、しっかりと対応していく所存ですので今後ともよろしくお願い申し上げます。

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以上です。

年をとり、肉体や精神が衰えてくると色々な障害を引き起こす素地がでてきます。はっきりとした病気や疾患の診断まで至らない状態のことをさす言葉として「フレイル」「ロコモティブシンドローム」「サルコペニア」などが提唱されています。

「フレイル」は2014年に日本老年医学会という学会が提唱したもので、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、慢性疾患の併存の影響もあり生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入、支援により生活機能の維持向上が可能な状態」と定義されています。年を取って、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも衰えてしまう一歩手前の状態という、広範な概念です。主に内科の先生方が言い出したこととなります。

「ロコモティブシンドローム」は、このフレイルの概念のなかの身体的なもの、特に運動器の障害による移動機能の低下した状態を指すもので、フレイルよりも早く、2007年に日本整形外科学会が提唱したものです。主に整形外科の先生方が中心となって様々な活動を行っています。

「サルコペニア」は1989年にRosenbergという医師が「加齢による筋肉量減少」を意味する造語として提唱したものです。これに関してはまだ明確な基準や定義が確率されておらず、サルコペニアがあればロコモティブシンドロームになりやすい、といった位置づけになろうかと思います。まあだいたい同じことを言っているわけですが、色々な科の医師が、自分の土俵でイニシアチブをとりたいといったところでしょうか。要は年を取って弱る前にいい状態を維持したいという方向性に変わりはないものと思います。

私もこの投稿をみて、はじめて知った「オーラルフレイル」は、口から食べ物をこぼす、ものがうまく呑み込めない、滑舌が悪くなる等といった軽微な衰えから全身的な機能低下が進むという概念です。2013年に厚生労働省事業におけるワーキンググループの検討の結果、提唱されました。現在の定義としては、『加齢に伴うさまざまな口腔環境(歯数など)および口腔機能の変化,さらに社会的,精神的,身体的な予備能力低下も重なり,口腔機能障害に対する脆弱性が増加した状態』とされ、2015年には、日本歯科医師会がこれまでの8020運動に加えて新たな国民運動として展開させていくことを決定し、啓発活動も行われるようになっています。

スタッフが書いている通り、頚部から頭部、そして歯の領域は脳外科、整形外科、耳鼻咽喉科、形成外科、歯科といった科が重なり合って担当する部分でありながらお互いの情報伝達に乏しく、いわば縦割り行政のような感じになっています。これらの連携が深まれば、新たな知見や治療法が生まれる可能性のある分野ではないかと考えています。当院での治療実績をもとに学術的な研究をおこない、いずれ発表していければと考えています。