当院はリウマチ科を標榜していることもあり、指先の痛みで来院される方もおられます。色々な疾患の一つに、へバーデン結節というのがあります。これは指の第1関節(DIP関節)が変形し曲がってしまう原因不明の疾患です。第1関節の背側に2つのコブ(結節)ができるのが特徴です。この疾患の報告者へバーデンの名にちなんでヘバーデン結節と呼ばれています。
症状は、指の第1関節が赤く腫れたり、曲がったりします。痛みを伴うこともあります。動きも悪くなります。第1関節の近くに水ぶくれのような透き通ったでっぱりができることがあります。これをミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼びます。原因は不明です。一般に40歳代以降の女性に多く発生します。手を良く使う人になりやすい傾向があります。遺伝性は証明されていません。病態としては変形性関節症であり、加齢により起こる変形と同じであるとされています。
治療としては、局所の安静(固定も含む)や消炎鎮痛剤の投薬、局所のテーピングなどがあります。これらで痛みが改善しないときや、変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合は、手術を考慮します。手術法には結節を切除するものや関節を固定してしまう方法が行われます。
以上は日本整形外科学会のホームページから引用したものです。原因がわからず、加齢のせいで起きる。さらには痛み止めくらいしか方法はなく、進行を止めることも難しい。そういう説明しかできず、歯がゆい病気のひとつであるわけですが、先日聞いた講演で、エクオールという物質がへバーデン結節に効果があるかもという話がありました。
へバーデン結節は女性にかなり多いことがわかっていて、それがどうも女性ホルモンの一つであるエストロゲンの減少によって起きてくるのではないかとする意見があります。女性ホルモンは、靭帯や腱の柔軟性に影響を及ぼすことはわかっており、エストロゲンの減少により靭帯や腱といった「すじ」が硬くなり、それに伴って関節への負担が増して、変形がおきてくる可能性はあります。
エクオールというのはエストロゲンと似た働きをする物質で、大豆などに含まれるイソフラボンが腸内細菌によって代謝されてできます。豆腐や大豆を積極的に摂取すればよさそうです。ところが日本人の半数はエクオールを体内で作れる酵素をもっていないとのことで、大豆や豆腐を食べても効果がない可能性があります。
しかしサプリメントとしてエクオールが発売されており、服用した人の7割に症状改善効果があったとの報告があります。また更年期症状の改善にも有効であったとのことです。これはあくまでサプリメントであり治療薬ではありませんから、医学的に証明されて保険治療ができるというものではありませんが、私が見る限り危険なものでもなさそうですので、困られている方は一度試されてもいいのではと思います。