当院ではyoc通信という小さな情報誌を数年前から診察室に置いています。これからホームページにもアップしていこうと思います。また過去のものもピックアップして掲載していきたいと思います。まずは今月発行のものから。

西高東低

「西高東低」というと、冬の天気予報でよく聞く言葉かと思います。先日、骨粗鬆症財団という機関から、骨折に関わる「西高東低」の速報がでました。今回はそのお話を。

高齢者が転んだ時に多いのが脚の付け根の骨折、大腿骨頚部骨折です。この骨折を起こしてしまうと全く歩行ができなくなってしまうので、手術をしなくてはならなくなる怖い骨折です。先日、骨粗鬆症財団が医療機関から提出されるレセプトのデータを使用して、大腿骨頚部骨折の発生率を調査しました。その結果、2015年の年間骨折発生率は、人口10万人あたり男性が89.2人、女性が299人となり、都道府県別にみると男女ともに発生率は「西高東低」であることがわかりました。

 

その原因が何なのか。諸説あります。

1.納豆の食習慣

納豆にはビタミンKがたくさん含まれています。ビタミンKは血液凝固、骨を作るために必要とされ、動脈硬化の防止作用もあります。東日本では納豆を食べる習慣が定着しているため、骨折の発生率が下がっているのではという説。

2.気候

当たり前ですが、東日本は西日本に比べ気候的に寒い。冬場は雪も積もります。どうしても家で過ごすことが多くなる。出歩かないから発生率が少ないのでは、という説。しかし大腿骨頚部骨折の発生場所は屋内が半数以上ですから、これはちょっと原因としては弱いです。

3.骨粗鬆症に対する問題意識の差

骨粗鬆症の予防・治療が、元気に年を重ねるためには大事だということは耳にされることと思います。骨密度検査・骨に関わる血液検査の実施率をみると、男女とも青森県、北陸、北関東、長野県、宮崎県で高く、この地域の骨折発生率をみますと比較的低いのです。日頃の骨粗鬆症に対する意識の差が骨折発生率に影響している可能性があります。

ご当地大阪は、男女とも骨折発生率は残念ながらかなり高く、われわれ整形外科医も今後さらに骨粗鬆症に対する啓蒙、啓発を行っていく必要があるなあと思います。自分は大丈夫なのかな?と思われたらならば、気軽に受診していただければと思います。