今回も職員である理学療法士からの投稿です。

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ひざ歩き  

 先日、当院待合室の週刊文春で、共立女子高歩行部の小さな記事を目にしました。創部は古く、他に例がないそうです。創部の頃は正しい歩き方などを研究、現在は食べ歩きなどがメインだそうです。  作家の村上春樹さんのエッセイ集の中に歩行に特徴的な人々に関するイタリアの山村での記事があり、足が曲がってチョコチョコ歩きで、世界中どこにいてもすぐに見分けられるそうです。

 我が国をみてみても、前屈み姿勢で、膝と足が曲がって小幅で歩く人をよく目にします。これを「ひざ歩き」といいます。膝痛で当院を受診され、院長の指示のもと、リハビリにこられた方のリハビリ室への入室時に歩容をチェックしていますと、この「ひざ歩き」をされている方は多いです。

 「好きに歩いてんねん、ほっといて」と言われそうですが、患者さんのこれから先のことを考えると放っておくわけにはいかず、手取り足取り厳しく指導したり、動画や写真を見せて指導したりします。その結果、歩容が改善して膝の痛みが改善する方がたくさんいらっしゃいます。

 地球上ではすべてに重力が働いていますので、人の一生は重力との戦いであると言っても過言ではありません。歩行の際に膝関節は重要な働きをしますが、生理的ロッキングメカニズムというのがあって、膝に荷重がかかるときには膝関節は瞬間的にロックがかかる仕組みになっています。その為には踵から着地するなどの準備が必要ですが、殆どの人が省略してロックを外した状態で荷重をかけています。おまけに約10キログラム前後の足を持ち上げながらで、これでは変形や痛みが起きるのは目に見えています。

 ちなみに脳卒中の場合は脳から下肢を動かす命令がうまく届かなくなるためにロックがかけられなくなったりかけにくくなったりしていますので、ロックをかけられる様になるまでのリハビリが必要です。

 健康関連のテレビ番組をみて、自分で何とかしようとして、足の筋肉をつけよう、とか、値段の高い健康食品を摂り続けたりしているのにうまくいかず、当院を受診される方も多いです。テレビで言われていることはあくまで一般論なので、個々人にそれがあうかどうかを見極めるためには医療機関での診断、そして細かい指導が必要です。

 また、痛みを早く取りたいのであれば関節におきている炎症を取り除くことも大事であり、薬を服用したり、関節に炎症を抑える注射をうつことも必要な場合があります。痛み止めは飲みたくない、飲んでもその時痛くなくなるだけでしょう?とか、注射を受けたらみずがたまってくせになるからいやだ、といわれる方もおられますが、痛み止めは「消炎鎮痛剤」といって、炎症を消す効果もあるのできっちり服用するほうがいい場合が多いのです。また関節に水がたまるのは、炎症が起きているからたまるのであり、炎症が落ち着けばたまらなくなる。注射しても水がたまるのは炎症が落ち着いていないからであり、その場合はなおのこときっちり注射を打ち続けることが大切です。そうやって炎症を早く取り除く方が、リハビリのスピードを上げることにもつながります。当院では毎日院長とスタッフが症例検討をしながら実績を積み上げていますので、安心してお任せいただければと思います。

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 以上です。人間のからだは色々な部位が連動していますので、痛みのある場所だけに固執していては治療がうまくいかない時もあります。そういうとき、理学療法士を始めとしたリハビリスタッフは体全体をみて、適切なアドバイスをしてくれています。リハビリをうけられている方は、わかるまで方針を聞いていただき、そして「ともに治す」気持ちを持っていただければと思います。またこの記事をみて、自分にもリハビリの適応はあるのか気になる方は、受診していただければと思います。